残暑
朝晩の気温の高低差
きわだち
いっそう
きびしい
立ちくらみに知らされた体調
くらくら
ふらふら
暑いお部屋に
挑みにゆくも…
死のお片付け
どころか
いま
死ぬ…
シーちゃん
と
そろりそろりと
転げないように
引き上げた
難関の大物
朽ちた部分だけは外せた本体を
しげしげ眺めて対策を練ったけれど…
暑い暑いお部屋での作業は到底無理
とわかったし
移動も無理となって
すっかり煮詰まった
こんなとき
こころにわいてくるのは
どこかの知らないお寺
がらんとした和室や
ちいさな机
わずかの本
一輪の
花や…
寒い朝には
からだは
一所懸命
あたためようとしていて
またたくまに
真夏日となり
にわかに
発汗しようと
また
一所懸命
血流をふやしてくれてて…
風邪にかかった?
くらいの汗と
立ちくらみ
やってきた
ああ…
まだなんにも食べてないなあ
と
一所懸命
飲んで
食べた
いちにち
死んでくってのに…
死ね
とばかりの暑さだなあ
暑さ
助けに
どんどん捨ててしまったならば
どんなにか軽くなれるのかなあ…
つまらぬ
ひとつを
救う
など
罪滅ぼしもどきしてる時間なんて
もう
きっと
ないのだろうなあ…
頭も
脳細胞も
死んでくっていうのに…
ママ
お裁縫のところを
パパが撮った写真
あんまり
きれいで
そばに
置いた
弟の浴衣を縫っていて
しあわせな
笑顔
ママ
ゆくとき
あまりに突然のことで
パパの時のような
ついに
その時きたのか
という
その予兆に
間に合わず
かろうじて
息ある瞬間
にだけは
間に合ったという
あの時
くっきり
切り取られて
いまだに
脳のどこかのお部屋に
あるなあ…
朝晩の涼しさのおかげで
冷蔵庫が冷えてくれてたりする
霜取り運転が
日中の暑さにかかったりすれば
また
ただものを腐らせないだけ
の冷蔵庫に…
ママ
施設でも
病院でも
お家でも
冷蔵庫に何々が入ってるから
と
食べたらいいよ
と
ずっと
言ってくれてた
お仏壇に上がってるもの
食べてちょうだい
って…
もうすぐ
お彼岸…
ごめんなさい…
ごめんなさい…
ママが集めた
急須が
たくさんあるのになあ
お茶
茶葉
みんな
すり鉢にすって
みんな
丸ごと
飲んでる
無粋…
昨晩
眠れなくて
真夜中
ほうじ茶をすってた
お仏壇のまえ
ありがとう
ごめんなさい
と
すって
すって
小瓶
いっぱい
ほうじ茶のお粉できた
すり鉢に残ったお茶の粉
今日は
ゼリーに固めた
大麦の甘酒をかけて
おやつに
いっしょに食べよう
と
仏さま
パパママ
天国のひとら
と
いただいた
ありがとう
ごめんなさい
つひにゆく道とは
かねて聞きしかど
昨日今日とは思はざりしを
いま
ゆくのかという
その時に
このように
詠むことは…
在原業平を
よく知っていない
よく読んでいないんだけど…
もし
歌を
詠むこと
禁としていなかったならば
道元さまならば
どのような
御歌を
詠まれたのだろうなあ…
黄泉に陥いる
という
遺偈
ついに
の
しずかな
おもい
ぼんやり
ぼうっとしてるまに
露と
消える
のではなくて…
のこる
むくろ
となって…
生きる
って
のこる
のこす
って…
きっと
おもうより
おそろしいことなんだ…
って
おっきな壊れかけ冷蔵庫
大物の朽ちたものの残骸
ものの
山
見てた…
むくろ
だけで
それだけでも
真夏
猛暑の
真夏は…
などと
おもってた…
捨てねば
だなあ
ママ
って
ごめんなさい
って
明日
あたえていただけたら…
暑さ
ヨーグルトの発酵に
ちょうどよい暑さで
スキムミルクのヨーグルト復活させてた
なにひとつしてみても
生きるということ
死にゆくということ
のこす
のこしてゆく
しかない
ということ
と
ものの
多さに
ため息…
平和
こころの
平和
混沌からは
けっして
うまれてくれないなあ…
救おうと
手をかけたもの
罪滅ぼし
には
なってくれないなあ…
ため息
ため息しか
ない夜でも
生きて
ある
いま
ありがとう
ごめんなさい…
救急車が
ひっきりなしにゆく
助けてあげてください…
祈って
祈っているばかりの
夜
無事
ただ
祈っています
やすめていますように…
かならず
かならず
無事にいてください
ありがとう
また
明日
おやすみなさい