山の夢
ママがあらわれた
名前を呼ばれてた…
お家の二階から山を見れば
さっぱりするって
いつも言ってたママ
南無阿弥陀佛
南無阿弥陀佛
南無阿弥陀佛
肺が痛くて
喉が痛くて
体が痛くて
真夜中に
白湯もココアも飲んで
ふらふら雪の様子ただうかがって
明け方の夢
山
山にゆくと
死にちかいママは
くりかえし言っていた
山
パパにも
おねえちゃんにも
大好きな国語の先生にも
山
こちらの山
岩木山の詩
陸羯南の詩
おしえてもらっていた…
名山出名士 名山名士を出す
試問巌城下 試みに問う巌城の下
誰人天下賢 誰人か天下の賢
南無阿弥陀佛
パパの
おねえちゃんの
大好きな先生の
尊敬する陸羯南
奈良美智さんも…
敬愛する平和のひと奈良美智さんも
この詩に
こころ
奮い立たせてもらってる…って
わたし…よわってる…ごめん
ごめんなさい
ありがとうと
生きていよう
食べようと
手を合わせた
山の夢
わたしも…山に?
ものすごい寒波と雪
今年は
お家もたないかな…パパ
ここに死ぬなら本望…
ふらふらの今日
風邪っぽいから風邪っぴきへ…
風邪には大食いだ…って
必死に食べて
いっぱいいっぱい食べた
ごめんなさいと食べた
鼻をかんで
また食べて…また
ごめんなさいする
平和を祈るんだ…わたしも
わたしも
平和のひとになれるように…
陸羯南は
筆をもって
政治で無く
筆で
志を
貫いたひと
この国のため
この国のにんげんのため
この国と
世界の
平和のために
人生を
賭して
筆をもって
権力に
対したひと
いま
この
いま
陸羯南は
なんと言うだろう
名目では無い
実質の自由
にんげんの
まことの
自由
追求したひと
いま
問われている
いまだ
倒れてて…ごめんなさい
お家
まだ
つぶれないで
生きている
もしも
二月までお家も無事で
生きていられて
歩けるならば
選挙に…って
五観の偈おとなえして
いっぱい食べた
ごめんなさい
ありがとうと
いっぱい食べた
平和
わたしには
筆のちからも無い
無力
平和
祈るきりのわたし
悪わたしにも
祈らせてください
戦争が終わりますように
世界が平和になりますように
十五年戦争の果て
自決した医師の歌
書いておく…
赤道を南に超えてことごとく
身にあたらしき花鳥に遇ふも
(ニューギニア戦線)
蠟の燭(ひ)の読みがたけれど人を恋ひ
枕辺におくその手垢ぶみ
密林の長き夜ごろをさめやすく
鼠額(ぬか)を超え蜥蜴(とかげ)は脛(すね)を這ふ
米川稔
陸羯南の
友
正岡子規の歌にも
山はうたわれている
霞む日をうてなにのぼり山を見る
山遠くして心はるかなり
悪
わたし
だれひとりとも
ただのひとりの
にんげんとも
つながってならないと
こころが
凍った
あのまま…あのまま…
悪も
極まって…
泣いていた
なにもかも
こわい
よわい
いま
悪はわたし
われ独り悪
さいわい
無事
祈る
孤独に
死ぬ
そのとき
南無阿弥陀佛
お念仏と
祈りと
おれるわたしであったならば…
お釈迦さまに
阿弥陀さまに
おまえも
わかった
と
よろこんでいただくわたしと
なれるのだろうか…
そんな
邪
また
きた…
南無阿弥陀佛
鼻をかんで
食べて
ごめんなさいと
お祈りしていた
ごめんなさい…ごめんなさい…
ほんとうに
こわい
ほんとうに
よわい
わたし
よわって…
ごめんなさい
ごめんなさい
明日
生きて
またいちにち
あたえられたら
また
祈るんだ
悪わたしにも
祈らせてください
平和
祈ります
平和
無しに
強さも
ひとの
尊厳も
自由も
幸福も
ありません
平和
祈らせてください
祈るきり
ごめんなさい
無事
祈ります
倒れないように
転ばないように
怪我
事故
無く
無事に
火の元
気をつけて
無事に
かならず
かならず
無事にいてください
祈るきりのいちにち
祈るきりの夜
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ありがとう
ありがとう
ありがとう
おやすみなさい