礙
さわり
もう
この
大量のもの
ここのお家にあったもの
礙
さわり
としかならない
もう
わかってる
だから
よけい
捨てられないこと
くるしいんだなあ
すくい
あかり
道
仏心と
仏への
道
もとめるのなら
師も無く
ひとりぽっち
みおしえ
ただ
こころに置いて
たのみ
もとめて
信ずるもの
一心に
つなぐこと
ねがうなら
そうして
おしまいまで
死のそのとき
まで
その
ひとすじ
かすかにも
つなげていただこう
そう
一心に
ねがうならば…
饒
は
あってならない
衣食に饒かなこと
あってならない
と…
ただ飢えを忍び寒を忍びて
一向に学道すべきなり
学道
あちらへ
つながっている
お浄土へ
迎えられたのちも
修行していてくれるという
ごめんなさい…
ありがとう
自分のものたち
高価なものから
捨ててしまった
ぼろぼろでも
のこされてるものたち
パパママ姉上さまのもの
これを着て
ママ笑っていてくれたんだなあ…
ママがんばってくれたんだなあ…
って
これは
おねえちゃんからもらったんだ…って
うれしくて
せつない
おもい
のこされるもの
そんな
ひとつ
放ってあったもの
ひとつ
もう
捨てるしかなかった
姉上さまの洋服から
外しておいたボタン
吟味して
悩んで
つけた
傷んでいたところは
ていねいにほどいて
ちくちく手で縫ったまんまだったけど
供養のように
おもうように
ママも
いっしょに
仕上げてくれたみたいにおもわれて
ありがとう
と
手をかけた
放ったまま捨てる
には
ならなかった
ありがとう…
寒い
寒い
大雪の
こちら
ここからは
この水や風や
ゆきばなく
暴れて
さわりとなってゆく
自然に翻弄されつづけてゆく
あたらしい時代となったんだ…
たった
ひとり
古家に
生きてるって…
姉上さまのおかげで
ありがとうしかない
まだ
大きく壊れていないから
ほんとう
ただありがたいんだけど…
ほんとう
贅沢なんだなあ
迷惑かけていて
なんにもできなくなって
ただ迷惑かけていて
ただ
ただ
申し訳ない
ごめんなさい…
飢えぬほどに
凍えぬほどに
猫二匹といたときには
こたつ
猫たちとわたしの基地
湯たんぽも猫がいたら
いらなかったなあ…
猫たちの命日も
いっしょに
お祈りしてるなあ
シーちゃん
って
身動きとれない
しょんぼりのわたし
ごめんね…
って
天国の猫たちに
ごめんねしてた
あの古灯油の古ストーブ
体調不良で
おっかなくて
あれから焚けない
ふらふら
脈がとぶ
また
しずかにしてた
お仏壇のまえに
なんとか
いまのこころが
つなげてくれること
ほんの
ほんの
ちょっぴり
つなげてもらってた
ありがとう…
お直ししたものたちも
やがて
捨てる
って
知ってるのになあ
そんなことばかり
ずうっと
つなげてきたんだなあ…
もの
やがて
かならず
朽ちるもの
死のお片付け
明日
無い
と
こころより
ほんとうに
ほんとうに…
ねがうなら
捨てられないこと
ないのに…
パパも
ママも
姉上さまも
気にかかり
ずうっと気がかりで
気にかけたあげく
やっと
おしまいにちかく
たのまれたのになあ…
パパママの
声
まだ
耳に
こころに
きいている
もの
どうにも
自分だけでは
どうにも
しようなくなっていたこと
礙
こころの
さわりと
なってたんだなあ
わかってたのになあ…
ごめんね
ごめんなさい
声きいている
きいてゆくよ…
ごめんなさい…
まるで
ここまでを
また
いのちを
もう一度か
一度ならず
もう二度も
くりかえし
くりかえし
つなげてゆけるかのような
ものに
うずもれてるなあ
おろか…
身動きとれなくなった
おろかの
さわり
ものも
くもった
こころも…
おもたい
迷う
こころだ
生きてること
いま
いま…
こわいニュースきく
ひとり
祈る
戦争が終わりますように
世界が平和になりますように
なんにもできなくて
ごめんなさい…
かなしみと
せつない
おもいと
いっしょに
ありがとうと
いっしょに
おしまいへ
つなげてもらえるように…
祈っていた
ありがとう
雪も風も
水も
平和に
平和に…
無事にいてください
かならず
かならず
無事にいてください
ありがとう
また
明日
おやすみなさい