シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

震える手

裏道を

追われるように

揺れながら

走って

 

帰りついたアパートに

猫は

 

瞳孔が完全に開放した

真っ黒な目をして

カーテンの陰で

待っていた

 

あの地震は猫にとって二度目

最初は

 

恐怖のあまり

猫は粗相して 

しばらくしてから

黄色い胃液を吐いた

 

 

あの時は 

撫でてやったのか

抱っこしたのか

 

そのあたりの

記憶がない

 

 

お風呂でおかしな音が聞こえて

戸を開けると

 

水を張った浴槽が

何かの実験中のように横揺れして

波立っている

それで

 

余震か

安普請のツーバイフォー工法の

古い木造アパートが

倒壊する予兆なのか

 

天井や壁を確認した

 

突然

 

手が

カクカク

カクカク

コマ割みたいな

ぎこちない動きになって

ガタガタ震えがきて 

寒気が起きた

 

 

しばらくは

放射性物質の入った水道水を

飲んで調理に使い

お風呂ではおそらく

揮発したものを吸引して生きてて

 

臭いも

味も

色もないのか

と思った

 

水もお米も納豆も

放射性物質には無効

という浄水機能の商品も

スーパーから消えていた

 

品物の不足から

あちこちで客同士

喧嘩が起きていた

 

 

テレビの報道は

酷い映像を繰り返し流した

 

情報は

ラジオにして

懐中電灯を枕元に置いて

 

眠れない夜がつづいた

 

猫は

いつものように

わたしの左の腋下にもぐり

わたしの心臓の音を聞きながら

のどをゴロゴロと

いつまでも鳴らしてくれた

 

 

自然に抗うことはできない

 

人間のつくるものに完全もない

 

 

祈るしかない自分が

生きる資格があるのか

自分を恥じた

 

 

福島は

東京の電力をつくって

 

 

東京の畑をつくって

東京の米をつくって

 

東京を栄養して

動かしていた

 

東北の土

海…

 

 

土や

海を奪われた人たち

 

姿のない

 

喪失

 

祈るしかなかった

 

祈りは

懺悔になった

 

これ以上

罪を犯すまい

 

おもいやることの足りない自分

 

自分すら

よく理解できない自分

自分を

知ろうとも

 

もしかしたら

生きようとも

 

考えずに

生きてしまったかもしれない自分

 

逃げていた自分

誰かを

傷つけていただろうに

 

誰も

傷つけたくない

という

臆病に

 

逃げた

 

勇気がないよ

 

 

まだ

手は

震える

 

失なってゆくだけの

ぶざまな自分で

それでも

生きている

 

今日も

祈るだけの…

今日を生きてて

 

 

昨夜

『なまえのないねこ』

を読んで眠った

 

自分で自分がよくわからなくなって

自信がもてなくて

 

いちばん最初に

ママに

忘れられたわたし

 

勘違いしたママの前で

姉上さまのふりまでしたわたし

 

 

もっと早く

ママのそばにいてやれてたら…

もっと

 

もっと

 

 

わたしが

あきらめ

 

それでも

待っていたのは

 

ママに

もう一度

 

名前を呼んでもらうこと

 

 

かなった…

 

かなえてもらった

一昨年の入院で

 

治療してもらい

栄養してもらい

 

あたたかく

見守ってもらい

 

文字どおりに

手当てしてもらい

そして

 

ママは

わたしの名前を

呼んでくれた

 

ふつうに

 

自然に

 

生きてゆこう

と思った

 

 

ありがとう…

 

ありがとう

ママ

 

姉上さまも

ありがとう

 

心配してるだろな…

シーちゃん😽

 

クロちゃんは?

いらないなら

 

ほしい…😿

 

姉上さまのとこには

クロ猫のぬいぐるみいるのだ

シーちゃんより

ちょっと小さい…

 

 

これからを

勇気りんりん

生きるため

 

わたしは

わたしを

信じてあげよう

 

わたしは

わたしを

手当てしてあげよう

 

 

このお家も

もう少し

かるく

きれいにして

 

後ろ髪

引かれないような

 

よい空気を

ながしてあげられるように…☺️

 

今日だけは

 

傷つきや

かなしみを見つめて

明日は

また

一生懸命

つづきをしよう

 

 

   あの波は

   たましひのみて消えざるを

   浴槽は吾を

   闇に沈める

 

   氷の手恐る母逝き

   彼岸まへ

   腋下つひ抱擁せり

   吾は

 

   誰がために花びら

   丸く咲く花ぞ

   乙女の母の

   夢の袂よ

 

 

今日の短歌です…☺️

 

ありがとう…

 

まだ

お風呂こわい…

 

ママのため

いつもお湯であたためてた手

 

きりきり冷たい…

よく

わきの下で

あっためてた

 

ママのためだったのに

ついやるよ

まだ☺️

 

 

ママ乙女の頃のお着物

袂が丸く

けれど

地味

よい感じです

 

姉上さまから

着付けを習いたい…👘

 

 

魂は

やすらかで

 

見守っていてくれる

と信じています

 

夜の祈りをして

 

眠ります

 

 

あなたも

ゆっくり

眠れますように…

 

 

ありがとう

 

また

明日

 

おやすみなさい