シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

無条件

愛すること

愛は

 

意志という

 

無条件の

 

 

こころ

極限にあった

 

親ふたりの病から

追いつめられ

 

いたたまれず

 

自分を

追い込んだ

一日中

極限まで

動きまわった

 

げっそりと

痩せた

 

いまは

そんな底よりは

肉体は回復した

 

いくらか

解放されたはずだった

 

けれど

いきなり

やってくる

恐怖感

孤独

 

かなしみ

 

 

無条件の愛に

安心して

 

その傍らで

眠ること

二度と

ないんだなあ…

 

わたしを

生きよ

 

心底

祈ってくれる存在は

 

もう

どこにも

 

この世の

どこにも

 

もういないんだ

一日ごと

さみしい

 

 

天国を信じる

 

でも

わたしはそこへ

ゆくことができないとおもう

 

 

しばらくの雨に

まぎれて

また

だらしなく

泣いてた

 

雪片付けして

むやみに食べ

眠った

 

 

ママと

 

人生の

おしまいに

まるで

いらないものみたいに

あわれになってゆくママと

 

そう扱われて

かなしい目をして

 

ぼんやり

眠るでもなく

車椅子に乗せられ

 

小さな声で

さみしそうに

 

ひとりごと

言っていたママ

 

 

もとより

いらないもののようだった

わたしと

 

ふたり

 

頼りない

小さな

ふたつの

いのちは

共鳴した

 

ママの最後の

大きな病によって

 

助けてもらい

守ってもらった

小康のおかげで

 

お家でゆっくり眠りたい

という

ママの

ささやかな願い

 

いっしょにいたい

わたしの願い

 

支えて

後押ししてもらえた

ありがたい

ありえない

めぐりあわせ

 

そうして

 

お家で

いっしょにいられた

 

だから

 

ここに

生きてるよ

 

言いたくて

 

 

伝えたくて…

 

 

姉上さまから借りた

おんぼろタブレット

毎日

生きてる

 

生きてるよ

って

言った

 

毎日

毎日

 

ママに

笑って

 

だいじょうぶ

 

だいじょうぶ

 

ありがとう

 

ありがとう

と言って

 

 

ママを

見送ることができた

 

 

タブレット

もう限界

 

すべて

借り物暮らし

 

この古家に生まれ

この古家に帰って

あれから

 

自分の力で

生きていません

 

みんな

姉上さまに助けてもらい

みんな

借り物の暮らし

 

情けないわたしを

なんとか

生きてきた

生きています

 

 

食べる以外に

なんにも

手に入れようとは

おもわなくなった

 

なんにも

いらない

 

 

よわく

極限の

こころ

 

 

わたしは

そんな極限を

綱渡りしていたのかもしれないけれど

 

ママが

生きていてくれて

 

一日ごと

弱ってゆくのに

わたしを

ずっと

 

ずっと

 

ちからづよく

見つめてくれていて

 

懸命に

 

一瞬

一瞬を

大切に

大切に

生きてくれていて

 

 

最期まで

無条件の愛で

 

守ってもらったのは

 

わたしだった

 

わかりました

 

 

 

風変わりな

孤独を生きてきて

 

どこまでも

孤独で

 

支えを

すっかり

失ったようになりました

 

また

もとどおり

いらないもののようになっただけ

 

もとに

もどっただけ

おもっていたけれど

違った

 

いつまでも

さみしい

 

いっしょに

生きていた

おしまいの時間が

ここで

まだ

息づく

 

けれど

もう

どこにも

ママはいない

 

 

 

生きてること

伝えてゆくことは

もう

いいのかなあ?

 

考えたら

何にもできなくなった

さみしかった

 

ひたすら

雪片付けして

極限になった

 

タブレット

いよいよ

限界

 

子どもみたいに

姉上さまのため

言われたとおり

 

たくさんの決まりごと

つくっては

守ってきた

 

なんとか

役に立ちたくて

 

節約して

工夫して

 

なんとか

生きてきた

 

 

不思議な生活して

 

普通なんてなくて

 

 

生きてるよ

って

 

ママと

ここで

生きてる

 

伝えては

ようよう

生きていた

 

 

人は

無条件の愛なしには

 

生きていたい

って

言えないのかもしれない

素直に

なれないのかもしれない

 

 

ただひとり

シーちゃん

 

 

雪が止まない

おそろしい風吹きつける

 

生きてる

食べてる

 

毎日の

祈り

 

 

おんぼろタブレット

限界まで

 

生きています

って

伝えていたいなあ…

 

無条件の愛を

天国を

信じよう

 

 

除雪車の音

物々しい…

それから

救急車

 

猛威は

オミクロンも…

 

 

どうか

無事にいてください

 

心身が

すこやかに

 

一日

一日ごと

平和に向かってゆけるように

祈ります

どうか

 

かならず

 

かならず

無事にいてください

 

 

ありがとう

 

おやすみなさい

 

ゆっくり

眠れますように