一度だけ
介護のさなか
自分に負けた…
ふりかえれば
すでにママ介護は終盤だった頃のこと
通院には介護タクシーを呼んでいたのだけれど
それなりに訓練され
手慣れているという運転手さんが
ひとりでやって来る
はずだった
いつも補助するのはわたし
着替えや処置はすべて終わらせておいて
リクライニングの車椅子に移動させるのには
あらかじめ
大判タオルをママの下に敷き込んでおいて
わたしが軽い足の方を持って
運転手さんと二人で
「せ~の!!」
で
倒して置いた車椅子にママを乗せる
安定した楽な位置を確認して決めるのも
管を危険のないように固定させるのも
わたしに委ねられていた
何しろ素人で
毎回
たいへんな緊張を必要とされた
それゆえに
かならず早めに来てもらえるように
念を入れてお願いしていた
かなりな緊張と
少しの重労働ではあったけれど
それら一連の行為が
普段のわたしでは考えられない
何らかの脳内物質を大量に噴出していた?
などとは
知る由もなく
案ずるより!というような
毎回
しっかり安全を確保できて
無事に通院できて
ママの鼻から胃へと通された管は
新しいものに取り換えられていた
その日
までは…
いつもならば
すべては無事に終わり
ひたすら疲労しつつも
まるで労うような安堵したような
ママの眼差しに
慰められ
励まされ
さあ!もう大丈夫!!
あと3ヵ月これで安心だよー☺️
って
ばんざーい!して見せて
ママも
目を真ん丸く
くるくるして返してくれて…😶
それで終わるはずの一日
だったのに
運?
その日は
雨
寒い雨の日だった…😑
不慣れな初めての運転手さんが
ちょっと遅くやって来た時には
(わたし…がんばれ…)
と
すでに不思議な緊張が
たかまっていた自覚があった
この運転手さんが
自分流の正義感を譲らず
てこでも
こちらの
必死の懇願を
まったく飲まない人であったのだ
運
って
こういうことか…
いつも他の運転手さんたちが
してくれているようにはできないと言い
家の前には駐車できない!!
と言い張る…
(なんですと??)
路上駐車がいけないのだ
の一点張りで
めまい…
押し問答していても
時間が過ぎるばかり…
違法駐車して近隣の敷地に駐車する
と
運転手さんの中では
気持ちが決まっていて
すでに
堂々と違法駐車して
そこの他人の敷地内に停められていた…
現実??
うそっ!!
うそっ!!なんて
言わない人なのだ…わたしは
いつか
誰かにたしなめられて以来
ホントに!!
って
言い換えたのだった…
が
うそだろ…😣
って
口に出た
ママは
小さな動きや体位変換で
「…いたい…😑」
と言うようになっていた
眼振も起きていた…
雨は
つよくなった
でこぼこ採石場のごとき大きな砂利の上を
古くてガタガタのリクライニング車椅子で
なるべく振動しないようにしずしずと押してゆく…
そんなわたしを見て
その運転手さんが苛立って
いかにも専門家?らしい素振りで
わたしから
車椅子をもぎ取った
後の予定も
つかえているらしかった…
病院には
ぎりぎりかあるいは
数分遅れて到着したのだろうか
慌ただしく
運転手さんは
別の患者さんへと向かうために消えた…
なんだか
とても惨めなきもちと
焦りの中
電話が鳴った
受付もして
処置の順番を待っているところで
とても混乱した
何を言っているのか??
伝わってこないのだった
おそらく
到着前の何らかの問い合わせに
もうすでに
処置室前で待っているというのに
どこにいるのか?訊ねているらしかったけれど
もう受付して処置室の前で待ってます
が
まったく
伝わってくれない…
何なんだ…
わたしに
おかしな脳内物質が噴出した!
あんなことは
経験したことなかった…😢
わたしは
冷静を欠き
まっとうな人間ならば
決してそうはしない
慇懃無礼な態度で
丁寧でも
怒りを込めた言葉を
何度か繰り返していた
その直後
自分に
絶望した…
自分が
自分ではあまり好ましくはおもえない
爆発したり
暴力的になったり
攻撃的になったりする
そういう人間の
ひとりである…
ということを
どこかでは
自ら選んで!
そういう方法を
咄嗟に
選択した
ということを確認して
敗北を
厭というほど
味わったのだった
わたしは
このことを
忘れてならない
忘れない
ずっと
反芻している…
弱さは
おのれで克服してゆかねばならないのだ
弱さで
弱さに向かってゆくのはもっともいけない
事務の人なのか?それさえわからなかったけれど
すれ違いがあっただけだろう
その人たちには
そして
病院には
何の落ち度もないのだ
あの不思議な運転手だって
タクシー会社の経営陣の
単なる被害者かもしれないのだ
いまなら
わたしは
あんな言い方はするはずもなくて
ましてやママは
死に向かう道の途中で
いつもいつも
一瞬たりとも!
感情は波風立ってはいけなかったのだ…
あのような時にこそ
わたしだけは
冷静でいなくてはならなかったのだ…
いつも
わたしを見つめるわたしを
暴走させるのも見ていたわたしがいた
ゆるした
弱さ…😭
完全なる
敗北
子どものようなわたしだから…
その欠点は知っているのだから
せめては
純粋なこころをもちたいと願う
たとえ
自らは
いつか
失ってしまうにしても
いつも
いつまでも
見つけられる
素直に感動して
受けとめられる
そういうこころを
見つめていたいのだった…
かなしいことが
たくさん
たくさんあった
わたしの来た道だけれど
うれしいことも
その
何倍も何倍も!!
数えきれないくらい…
みちているわたしのこころ
自分を
怒らせては
ならないなあ
と
かなしみすぎてもいけないなあ…
と
今日も
祈るのだった…
神さま
神さま…
ほんとうは
いなくてもよいのかもしれなくて
教会もいらない
お寺には
ゆけなくなった…
けれど
なんにも
ひとつも
変わらない
これまで
もっとも感じ入った
信仰というものは
内村鑑三のそれ
と
宮澤賢治だった
宗教を
必要としてはいないのかもしれない
よくわからない
自然や
天や
生きている人の
懸命な姿や
天国の人たちの
おもい
わたしも
知らないご先祖さまたち
昔むかしの
人間の
おもい
祈り
その
道を
おもうと
生きてゆける
生きてゆこう
と
そこに至れる
しずかなこころになれる
ただ
それだけのことだ
いま
すべきことを
小さなことを
見つけられる…
やすらぎと
こまかい小さな慰めを
与えてもらえる…
やがて
終わるいのちなのだから…
歩いた
夜の道
どんどん
ずんずん
歩いた…
祈りになってくれるように
歩いて
平和に
近づいてゆけるように…
こころ
ほどけてくれるように
おだやかな一日が
終わってくれていること
祈ります…☺️
かならず
かならず
無事にいてくれること
今夜
ゆっくり
眠れるように…☺️
祈っています
わたしも眠ろう
シーちゃんと…
ありがとう
また
明日
おやすみなさい