この国の人びとが
かつて
自然と
よりそい
おそれ
敬いつつ
生きていた時代からの
宗教ともつかぬ
自然信仰とも括れぬ
いたわりの
あたたかな
こころ
おもい…
どうやら
消えつつあるのかなあ…
と
このところの
こわいことを
見聞きするたびに
どきどき
はらはらしてる…
堪えていると
やがて
言い様のない
かなしみに
こころ
重たく
重たくなる
わざわいに
その
まがまがしさに
すっぽりと
とりこまれた世界
もうすぐ
もうすぐ
そんな
暗い道
抜けようかという
いまになっても
いたましい
身勝手な
おそれ知らぬことがら
不意に
知らされると
つづけざまに
それらが押し寄せると…
いつにもまして
ただ
祈るしか
できなくなる
ちっぽけなわたしの
つまらない
ちっぽけな
不安
とか
絶望
とか…
無為
とか
それらさえ
押しやってしまう
人の業の為すことへの
恐怖…
自然の
ちからの
おそろしさ
祈るしか
なくなって…
無力を
知らされる
途方にくれてしまう
かなしいけれど
できることもなく
ひたに
ひたに
祈るしかない…
しばらく
冬に閉ざされ
風も通していない部屋に
あたらしい
新鮮な空気を通す
そこにも
どこからか
マイクロな
化学的な芳香が
迷い込むんだけれども…
お線香を点けて
今日は
ママといた時に
お香の代わりに焚いていた
お花の香りのお線香を選んだ
久しぶりに焚いた
ふんわり
香って…
胸
つまる香りだ
ママを
おもえば
たちまち
目が
うるむ…
でも
泣いてないよ
今日は
シーちゃん
お線香は
香料が使われてたもので
けっこうな芳香だった
ママ
苦しくなかったかなあ…?
と
遺影に訊いた
はなやかな香りに
お洗濯してて
息切れした…
体力
つけないと!
と
おもった
お肉も
お魚も
すっかり
遠ざかってしまい
食べる煮干しと
ピーマンと玉ねぎと
黄色い!ビタミン人参と
マリネした
生野菜が好き
台所
ようやく
オリーブオイルが溶けて…
今日から使えるようになったのだ
長い長い
寒い冬だった
寒さに
堪えると
人は
長生きできないんだって…
お寺の
お坊様たちは
昔から
みんな
寒さに堪えていたのではないの…?
と
おもって
子どもの頃
冬も
お寺へゆくの
大好きだったこと
着込んで!
もこもこ!!
に
着せられて…
そうして出かけたこと
忘れられなくて
おもいかえして
切なくなった…
修行ならば
いまも
この時も…
山の
お寺は
まだまだ
寒いだろうなあ
と
おもった
無為の
わたし
役立たぬ
たったひとりのために
大きな古屋
どこもかしこも
あたためて生きる
なんて…
無駄だし
いたたまれず
申し訳ない
と
いつも
いつも
おもうのだった
姉上さま
パパママ
ありがとう
って
ママが
残してくれていた
綿入れ半纏や
綿入れ丹前に
つつまれて
祈る仏間は
一年中
暗く
寒く
夏も
涼しいのだけれど
雨漏りもして…
もはや
憐れさが
きわまった感に
充ちてるんだけど…
今日は
少し
解放して風を入れた
少し
息つく…
春
ありがとう
祈るように
つまらない
小さなこと
ひとつ
ひとつ…
かなしみは
人を
こころを
削るなあ…
かつて
しみじみと
人びとの
こころにあった
息づいていた
祈りのような
おそれのような
おもい
この国に
しっかり
根づいていた
おもい
こころ
削られてても
忘れかけられても
消えてしまわないように…
どこからか
芽を
ふきかえしてくれるように…
と
祈った
人が
人を
おもう世界で
人が
ようやく
生きられるんだなあ…
と
祈った
祈るしか
おもうしか
そうしか生きれなくて
そうしか
できなくて…
ごめんね…
って
ありがとう
と
祈った
生きてる
今日も…
戦争が終わりますように
世界が平和になりますように
無事
とは
何事も無いこと
ではなくて…
自分の道を
自分で
一歩
一歩
ゆくこと…
歩いてゆけるかなあ…
しっかり
しっかり…
泣きたいような
心細い一日でも
こまごまを
つなげて
大好きな
お野菜で
常備菜つくったりすると
少し
落ちつく
へんてこご飯
だけど…
食べる
は
たいせつ
ママ
ありがとう…
綿入れ半纏
まだ着ている
ゆっくり
ゆっくり
無事に
歩いてゆけるように
おだやかに
一日が終わりますように
明日も
かならず
かならず
無事にいてください
ありがとう
また
明日
おやすみなさい