シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

ゆくえ

雨なのに

 

つづきの

お洗濯をした

 

洗い上げられて

石鹸の香りする古着物

乾くのに

何日かかるかなあ…

 

からり

乾ききるには

お彼岸が

終わるかなあ…

って

おもったら

 

泣けてしまった…

 

どっと

いきなり

泣けた

また泣いた…

 

急いで

仏間に

かけ込んだ

 

お仏壇のまえに座って

 

ひとしきり

泣いた

 

 

早朝から

お掃除して

それから

 

寒い台所と仏間と

ママのお部屋と

 

うろちょろ

あちこち

 

こまごま

始末して…

 

雪は

すっかり溶けたのに

 

今年もまた

お寺も

お墓も

ゆかぬまま

 

ゆけぬまま

 

そうして

泣いてるんだろな

 

お彼岸

お仏壇のまえに

泣くのか

泣いて過ごしてしまうのかなあ…

って…

 

泣いたら

 

呆然として

 

 

来年なんて

無いかもしれないんだよ…

秋だって

 

いや…

 

お盆だって…

 

明日

だって…

 

片付けの

つづきをした

 

 

洗った古着物は

真冬のものたちだ

 

このまま置いておけば

おそらく

やがては

捨てられるだろうものたちだ

 

ママが

最後に入れたとおもわれる樟脳は

すっかり揮発して

袋だけが残されてた

 

倒れるまで

ちゃんと管理してたようで

 

なんだか

かなしくて

 

とても

捨てられないなあ

って…

 

いまは

いよいよ

捨てられなくなって…

 

 

 

 

三月

 

もうすぐ桜

咲くだろう…

 

なのに

 

あんまり

あんまり

寒くて

 

ママの部屋を

整理してたら

 

秋のために

真冬の古着物を

きれいにしたくなって

 

それぞれ

筒袖

元禄袖の

綿入れの着物を

 

どちらも

もじり袖に直して

ずっと重宝して着てる綿入れ半纏のようにして

 

そして

元禄袖の

綿入れ着物は

二部式にして…

とか

 

遺影の

ママと

おしゃべりするみたいに

ひとりごと

言ってたのだった…

 

 

冬は

雪に追われながら

冷え込みにめげて

零下の仏間で

そんな

真冬の仕度のこと

夢みたいに

ママと…

天国の

ママとお話していたなあ

 

 

ずっと

まえには

古着物をお直しして着たら?

って

ママから

少し

送ってもらったことあって

 

洗って

ほどかずに

リメイクして

作務衣にした

 

はぎや

まち付けて工夫したら

一枚の着物で作務衣ができるよ!

ママに

報告したら

 

 

ママの声が

電話の向こうで

いきいきと

はずんで聴こえた

 

もう

ママは

得意だった縫い物

いっさい

しなくなってた

 

 

ごめん…

 

ごめんね

 

しばらく

泣いた

 

お経も

となえられないほど

泣いた

 

ふらふらして

足が

つった

 

めまいもして…

 

 

こんなきもちで

 

それでも

生きてる

 

生きている

っていう

 

それだけ

 

 

自分

じわじわ

痛めつけて

 

そうして

この

現実から

 

逃げてるだけ

なのかもしれないけど…

 

自分

殺すつもりなんて

まったく

なくて

 

ゆるして

と…

 

 

それどころか

 

こころから

 

こころから

生きたいはずだ…

わたし

 

 

きもち

ほんとうの

きもち

 

自分の

きもちの

ゆくえ

 

追っていたつもりが

見つめてたはずが

 

いつのまにか

すっかり

逃げてる

 

 

姉上さまには…

 

なんにも

伝えられる勇気

ない…

 

 

 

平和な

自由な

 

素直なきもちに

 

祈って

 

祈って

 

 

ただ

生きて

祈って

 

自分でも

どこへとゆこうとしてるか…

ほんとうに

わからないまんま

 

 

ネズミや蟻や

アレルギーや

免疫の暴走や

 

落ちて…

 

食べる

維持する

精一杯になって

 

そして

雪…

 

近隣の

 

片付けられてないと

気になるから!

っていう…

 

自分のところなのに

自分のペースでは

雪片付け

不可能

っていう

 

そういう

縛りを

圧を

 

世間を

見せつけられた

 

御奉仕雪片付け

やめたこと

によって…

 

恨み

しか残らないんだって

雪での

もめ事は…

だから

もめては

いけないんだって…

 

こわいよ

恨み

なんて…

 

 

 

今日は

とても

かなしい日だ

シーちゃん

 

 

お仏壇に

生きてるよ

ありがとう

ごめんね…

言った

 

泣きながら

しずかに

座ってた

 

座って

 

きもち

見つめた

 

 

平和へ…

 

平和へ…

 

ちっぽけな平和も

かなえられていないけれども…

 

祈る

 

 

雨が

しとしと降って

 

かなしい

 

ママの

月命日だ

 

 

戦争が終わりますように

 

世界が平和になりますように

 

 

緊張して

萎縮して

 

ママが

天国へ旅立ち

ずっと

かなしい

 

かなしいこと

ばかり

起きた…

 

 

眠り

わるく

 

眠る

というより

開けてたくないような…

 

それで

お布団で

泣いてばかりいたなあ…

 

 

今日は

今日だけの

たいせつな日なのに

 

眠りたい

眠って…

 

きもち

自由に

 

 

一日の

終わり

 

よい一日だった…

 

よい人生だった…

 

しあわせだった…

 

眠りたい…

 

 

ママ

最後には

 

うれしかった

 

たのしかった

 

みんな

過去形で

言ってた…

 

ありがとう!

わたしも

うれしくて

たのしいよ!

 

わたしも

言った

 

 

お彼岸だよ

ママ

 

ごめん…

 

ごめんなさい…

 

 

ふらふらする

って

 

なんか

食べ過ぎて

 

よけいに

ふらふら…

 

泣かないで

眠ろう…

 

 

夜には

雪みたいな

まっしろな

 

まっさらな

きもちになって

 

眠ろう

 

 

眠れてますように

倒れていませんように

 

かならず

かならず

 

無事に…

 

 

ありがとう

 

また

明日

 

 

おやすみなさい