シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

われひとり

パパに

すでに

示され

 

おしえられていた

 

ようやく

 

ようやく

気づいた

 

それで…

 

あの頃

 

パパの終末の

あの頃には

 

浄土教

他力門

證空さまによって

 

すでに

知っていて

 

わずかにでも

学ぼうとおもい

書物を読んでいたのに…

 

お家は

曹洞宗

自力門だ

 

気がひけた…

 

こわいこと

おそろしいこと

ばかり

話しつづけるパパに

 

痛み

 

悩み

 

遮光カーテンを閉ざして

それら

きりなく

聴きつづけることに

 

疲れ果て

 

そういう自分の事が

 

いよいよ

いやになって

 

罪悪感

ばかりになって

 

それでも

笑顔で

 

パパ!

毎日毎日

会いにゆく…

 

うそつき!

偽善者め…

って

 

自分

責めながら…

 

テレビもラジオも

拒否

パパには

 

会話が

すべて

だったのに…

 

だから

覚醒のために

麻薬はおろか

鎮痛剤も一切

拒否

だったのに…

 

お片付け

頼まれたのをいいことに

逃げるように熱中したり

 

 

時計と

にらめっこしては

 

かけもちのお見舞いの

ママのそばを

いつまでも

離れたくなくて

 

ママが

なんにも知らずに

おもいやってくれるのも

あわれで…

 

時には

夕方になった

 

真っ暗な病室に

ひとり

パパが

一日中

待っていたのに…

 

 

おのずと

ゆきつく

 

うちなる

佛の

大慈大悲

祈っていたんだけど

 

かつて

パパもわたしも学んでいた

キリスト教

 

エスの言葉

など

 

いくつか

つなげてみたりして

 

お茶

濁してしまってた

 

パパに乞われるまま

何度も何度も

讃美歌

歌った

 

飽きずに…

讃美歌を

一生懸命

くりかえし歌った

 

 

われひとり悪

おもって

 

ひとり

泣いた

 

 

そんな時

 

俺は天国にはゆけないんだ

地獄にゆくんだぞ

って

 

さも

すっきりとしたように

 

晴れやかに

 

あっさりと

 

パパが

言った

 

にこにこしてくれた…

 

あの時

 

これで

パパは

 

もう

誰も責めることも

なじることもなくなるんだなあ

 

戦争の罪を

惨たらしさを

語ることもなく

 

ママさえも

妬むような

邪なおもいもなく

 

ただ

 

われひとり悪

 

 

ひとり

一心に

懺悔して

 

懺悔して

ゆくんだなあ…

おもった

 

ただ

それだけ

つなげて

 

ひとり

ゆくんだ…

 

 

 

申し訳ないきもちで…

 

 

わたしこそ

 

わたしひとり悪

廊下で

泣いた

 

パパと

離れがたく

 

真夜中まで

病室にいた

 

 

泣きながら

帰った

あの夜

 

あのまんま

 

あのまんま

 

悪の

わたしだなあ

 

われひとり悪

という

罪悪感

 

自分という

 

ただ

それだけになった…

 

そこだけに

あること

責めずに

うけいれよう

 

そうすれば

 

ようやく

 

すべて

棄てる

という

 

そこへと

ゆきつけるんだろう

 

懺悔は

それで

 

はじめて

まことの懺悔

へと

ゆきつける

 

棄ててゆく

 

棄ててゆく

 

祈った

 

 

 

シーちゃん

眠りたい

 

 

ふらふらして

 

とても

寒い

 

でたらめに

たくさん食べた

 

ごめんなさい…

 

 

食べ物

いつしか

限られて

決まりきってて

 

たくさん食べる

偏り

 

貪り

 

 

ごめんなさい…

 

ごめんなさい…

 

 

ありがとう

 

ありがとう

 

 

ただ

ただ

 

かなしい

いちにち

 

いちにち

 

あたえられた

いちにち

 

いま

 

今日

かぎり

 

いま

かぎり

 

 

ただ

お祈りした

 

 

棄てて

棄てて

 

すべて

焼き棄ててしまった

一遍上人

おもった…

 

祈る夜

 

パパ

修行しててくれる…

 

ありがたく

祈る

 

 

 

平和に

たどりつけるように

 

お祈りください

 

 

 

無事

いちにち

終わりますように

 

 

かならず

 

かならず

無事にいてください

 

 

ありがとう

 

 

また

明日

 

 

おやすみなさい