シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

正座

正しく座る

と書く

正座

 

わたしの

座る

標準

小さな

小さな頃からの

 

 

うんと小さな頃

その頃の

お家は

 

おじいちゃんが

それまで住んでいた町から

こちらへ

 

以前の住まいだった建物を解体し

ここに

すっかりと

もとどおり移築した

こじんまりとして

京町屋のような

風雅なお家で…

 

幼いパパが

毎日磨いたという廊下や

奥までつづく叩きの横の

台所の板張りの小上がり

それから

和室から坪庭に抜ける縁側

床の間

どこの木部も

しっとり色味を深くしており

 

まさしくの古屋で

断熱材などという

文明の利もなく

それなのに

 

ほんのりと

どこもみんな

あたたかく感じられた

 

あたたかなお家

 

あたたかな家族…

 

 

水面下には

弱い人間が引き起こす

少々の

というか…

かなりの

軋轢があり

 

ママは

すべてに

 

堪えて

 

堪えて…

 

 

心身を病んでも

堪えて

堪えていたのだった

 

わたしは

知らず

 

ただ

かなしみだけは伝わってきて…

 

 

あたたかいはずの

お家の隅に

たまたま

ひとりになれば

 

誰かの

憶測が

淀んでいるみたいで

 

言い様なく

こわかった…

 

 

なかよくして

けんかしないで

祈っていた…

 

 

あのお家は

もうない

 

普請を重ねて

取り払われた

 

もう

記憶の

 

こころのなかだけの

大切なお家になった

 

板張りの

台所の小上がりで

姉上さまとご飯を食べる時にも

正座してたなあ…

 

ちゃぶ台があって

風が通る叩きに

打ち水をすると

 

夏は

とても涼しくて

 

色冴えた小茄子の漬物が

夏の定番のお漬物

それから

胡瓜と

 

つまみ食い

大好きで!

 

もう

お水とほうじ茶と

お漬物

それでいい…

ってなって

 

ママに

おかずもご飯も食べないと!

夏風邪引くんだから!!

って…

 

 

パパは

あのお家

再現したかったようだけれど

 

そんな夢物語

幾度となく聞かされたけれども

 

さすがに京町屋造りなんてものは

かなえられるはずもなかったので

せめては

リフォームの時に

あれこれと材木にだけはこだわっていた

いっしょに材木屋さん

見に行ったなあ…

 

 

そんな和室なのに

 

仏間

雨漏りして…

 

いちばん新しい部分で…

とても

残念なきもちだけれど

 

仕方ないなあ

 

 

寒い

暗い和室

でも

仏間にいるの好き…

 

正座

好き

 

長年の正座で

踵の内側が硬くなった

パパ譲りの痩せた足底

土踏まずのアーチが

模範的?理想的??

らしい

 

 

 

みんな

すべて

 

すべてがあって

 

わたしなのだな

 

ここ

なのだな

おもった

今日

なんにもできない今日

 

手の指が

腫れてしまった…

シーちゃん

 

熱をもってて

炎症らしい

 

 

負担を

迷惑を

かけるばかりになってしまった

姉上さまには

毎日

ただ

ただ

ごめんなさい…

 

ありがとう…

おもう

 

 

ひっそり

生きて

ただ

 

生きてる

というだけ

 

 

座禅が

大切な曹洞宗なのだけれども…

 

わたしには

いつもの正座が

 

和尚さまが

そうしてくれるように

 

正座して

お祈りして

という

 

正座が

 

こころを

かるく

 

あたらしく

 

には

とうてい

たどりつけないけれど

 

 

おもう

 

おもう…

そこへは

 

いつでもゆける

そんな

正座

 

 

でも

 

今日は

わけもわからず

とても

かなしい

 

 

平和が

かなうように

祈った

 

 

戦争が終わりますように

 

世界が平和になりますように

 

 

 

着物も

消えてゆくのかなあ…

 

一枚の

細い

長い布を

 

最小限に

裁断して

すべて

手で縫い上げる

着物

 

日本家屋があり

着物があり

 

正座があったんだろう

 

 

終戦

天皇陛下の言葉

そのラジオ

 

聴いている日本国民が

まだ

小さな子どもたちまで…

 

地べたに

そのまま

正座している写真を見たことがある

 

 

みんな

消えて

 

忘れられて…

ふたたび

戦いへと

向かないように

 

祈った

 

 

まだ

新聞も

そのまま…

みんな

みんな

あきらめて

 

眠ってしまいたいなあ

眠れるかな…

 

 

今夜

無事に

終わってくれますように

 

平和な

おだやかな夜になりますように

 

かならず

かならず

無事にいてください

 

 

 

ありがとう

 

また

明日

 

おやすみなさい