シーちゃんと

時々はシーちゃんとこっそり泣こう

お線香

 

信心の

つかい

 

そう

書かれてあったのは

菩提寺が配布したらしい

曹洞宗

小冊子

 

古ぼけて

 

すっかり

変わっている

 

パパ

たいせつに

取って置いてくれていた

 

 

もう

お寺

お墓

ゆけなくなってしまった

 

 

 

ものすごい音たてて

ものすごい雨の

 

温暖化だ…

シーちゃん

こわいねえ

起きて

 

 

お線香

たいた

 

 

お経

 

泣きたくなる…

罰当たり

泣きたくなる

 

信心

 

やどっていてください…

 

内に

 

天の

采配

あたえられていますように…

 

二度とは

 

これまで

為した

 

為すことの

無いわたしであるように…

 

 

身勝手な

祈り

する

 

 

ひと

こわいのも

 

こわいのも

 

わたし

というもの

 

不幸

不仕合わせ

 

わたしありき

によって…

 

引き出させてしまうのだろうか

 

そう

おもえてくるからだ

 

 

好意的

かつ

品位

あって

 

なにくれと

おもいやってくれるひとのいる

そうと

わかっているところ

 

お店屋さんの女性だけど…

 

ただ

一軒の

その場所にさえ

 

ゆけなくなってしまった

 

それで

 

こわい

正体

 

自分

って

知らされた

 

 

内気

 

臆病

 

 

立ちくらみ

ふらふら…

昨晩も眠れていない

 

朝は

お顔

真っ赤

 

手のひらも…

 

アレルギー?

血圧?

 

肝臓?

 

いまさら

健康か…

って

 

病院

どっこも

ゆけてないのに

 

ばか…

 

 

無いだろう

 

死ぬなら

死のう

起きた

 

お線香

たいた

 

 

ありがとう

 

ごめんなさい

と…

 

 

変なにおいするけれども

捨てられないものは

ママも

捨てられなくて

 

ながい

ながい年月

取り置くことに

結果として

そうなってしまったものたち

 

もう

そのままでは

だれも

身につけられない

 

だれの

なんの

役にも立たないものたち

 

 

捨てられない…

 

ならば

 

 

ならば

 

ひとつ

でも

 

変なにおい

だけでも

消して

 

洗った

 

 

古着物

ほどいてしまって

切り刻んでしまって

 

なにか

洋服の

ようなもの

には

 

洋裁してたわたしには

 

手の

手縫いの

 

ひとの

仕事

そんな風には

できないなあ…

 

わかってしまったのだ…

 

反物の

小幅の

 

広幅の

洋服の

布とは

ちがう…

 

ましてや

 

二度とは

つくられることないもの…

 

 

ちくちく

 

ちくちく

夢と

縫いあげたのは

 

ママか

 

田舎の

おばあちゃん

 

ママの

姉の

おばさんか…

 

 

田舎のひと

なので

 

とりわけ

おじいちゃんが

きびしいひとなので

 

田舎の

それも

もっとも

きびしい人間の部類で

 

女は

という

 

いまならば

 

男尊女卑の

典型かなあ?

おじいちゃん…

 

 

ママ

ほんとうは

 

縫い物も

 

お料理も

 

ちっとも

好きじゃない

って…

 

ええっ…

って

 

絶句するような告白

何度も

 

何度も

してたんだけど…

 

 

パパ?

似た?

わたし

 

いま

なんにも

できてないけど…

 

手で

つくる

好きなのも

 

体質も

 

体型も

 

パパ?

って

 

 

ごめんなさい…

 

お線香

たいた

 

 

また

夜も

お茶コーヒー

 

おそなえして

 

いっしょに

飲んでた

 

 

 

 

あって

 

そうして

ひとに

うまれてこられた

 

 

ご先祖さまたちにも

 

ごめんなさい

 

ありがとう

 

せめて

お線香に

 

つたえてもらえるように…

 

 

お祈りした

 

 

そうは言っても…

 

いよいよ

死のお片付け

その

覚悟が

ついたときには

 

いっさい

捨てねば

なるのだろうか

とも

おもってた

 

手をかけて途中で

 

そのまま

放っていた一枚

 

なんとも

不思議な

和洋折衷?

 

幾何学模様のレーヨンが

表で

 

裏は

ママが

赤ちゃん?のときの?

 

お手玉にでもしたいような

 

って

縫えないし

お手玉も一回も

したことないんだけど…

 

かわいらしい

かわいらしい布

隠れてて

 

すでに

くたくた

よれよれ

なんだけど

 

これで

おしゃれして?

 

洋服のなかで

目立とうとして?

 

デート?

してたのかなあ…

とか

 

ほどかず

なるべく

切らず

 

袖を

もじり袖にする

のみの

いつもの

わたしの古着物リメイク

 

仕上げられて…

 

泣きたくなった

 

 

 

わたしの

たのしい

 

いつも

 

ずっと

 

こんな

つまらぬこと

 

こんな

ささやかなこと

 

 

きっと…

 

きっと…

 

これは

 

パパ

生んで

まもなく

天に召された

おばあちゃん

 

内に

 

わたしにも

 

いてくれてるんだなあ…

って…

 

 

 

 

温暖化

 

台風は

ここから

 

このような

あたらしい

そして

 

ありがたくはないものと

なってしまいかねないようだ…

 

祈って

 

お線香

たいた

 

 

 

戦争

終わってくれるように

 

自然

いためる

一方の

人間

では

 

ない

と…

 

わたし

なんにも

役にも立たないんだけど…

 

ただ

ごめんなさい

つなぐ

生きる

 

恥じて

 

 

懺悔して

 

ようやく

いちにち

つないでいただいて

 

いま

だけれど…

 

 

生きている

ありがとう

 

お祈りした…

 

 

祈る

 

祈る

ばかり

 

ごめんなさい…

 

 

 

 

無事

祈ります

 

 

生きて

 

無事に…

 

 

かならず

 

かならず

無事にいてください

 

 

ありがとう

 

 

また

明日

 

 

おやすみなさい